日産の「THE PLAY LISTプロジェクト」でレッドブルになりえるか
こんにちは、わかつき(@tsubasa_waka)です。
日産が面白いプロジェクトを発表しました。
その名も「THE PLAY LIST」
6月に発売された新型エクストレイルに関連させたもので、日本のエクストリームスポーツを盛り上げるプロジェクトのこと。
プレスリリースはこちら。
日産、全国から「遊び場」を募集 情報提供者に10万円の謝礼|日産自動車株式会社 日本マーケティング本部のプレスリリース
具体的には、日本の様々なスポットをエクストリーマー(エクストリームスポーツのプレイヤー)のために、様々な「遊び場」に変えていくそう。
その「遊び場」となりうるスポットを、自治体や施設のオーナー、そして一般の人から募集開始しました。具体的な候補地として選出されると、応募者には10万円が進呈されるそうです。
エクストリームスポーツ(ここにおける定義は後述)のプレイスポットになりうるのであれば、扱いに困っている土地や建物、1畳から球場100個分の広さまでなんでもかまわないとのこと。
土地を確保してエクストリームスポーツ用の施設・設備を整えるところまでやることになると思うので、かなり大きなプロジェクトですよね。レッドブルみたい。
日本のエクストリーマーへの調査でわかった「場所がない」問題
このプロジェクトで興味深いのは、日本のエクストリーマーへの定性調査を行っている点です。プレスリリースによると、18〜59歳の男女へのネットリサーチで1,015サンプルが集まったとのことで、ここまで大きな規模のエクストリームスポーツに関する調査は珍しいですね。(しかもしっかり予備調査も行い、「1年に6回以上」その競技を行っている人を抽出しているそうです)
ちなみに、ここではエクストリームスポーツとは以下の13競技だそうです。
BMX / マウンテンバイク / フリーライドスノーボード(=スノーパーク、ビッグエア、ジブ、ハーフパイプ、バックカントリー、グラトリ等) / フリーライドスキー(スノーパーク、ビッグエア、ジブ、ハーフパイプ、バックカントリー、グラトリ等) / サーフィン(SUP:スタンドアップパドルボードも含む) / ボディーボード / スケートボード / キックボード / インラインスケート / カヌー / カヤック / ボルダリング / トレイルランニング / スカイダイビング
ストリートから海山川と幅広く調査しています。
調査結果を一部ご紹介します。
まずは全体平均。
(引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000054.000009883.html)
男性の方が多いのは肌感でわかりますが、平均年齢は40.5歳とけっこう高いんですね!
年6回以上趣味として行っている人への調査ということで、一般的な平均年収より多いので、社会人年度が高く収入が多く可処分所得に余裕がある層ということでしょうか。
ただ、使う予算が年15万と思ったほど多くないのは驚きました。
バリバリお金つぎ込んでやっている人と、趣味として最低限の出費でやっている人との差が大きそうなので、中央値も知りたいところです。
各競技別の数値は以下。
(引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000054.000009883.html)
当たり前ですが、大きな用具を使う競技ほど予算も多いですね。スノーボードなんかは冬季限定で場所もかなり限られてきますから、移動費や宿泊費もかさんできそう。
また、同調査では「練習する場所」や「競技へのサポート」が「まだまだ整っていない」ことへの計95.2%の「共感できる」との回答が集まっているということで、特別な施設が必要な各競技、まだまだ環境面での問題が多いようですね。
これはエクストリームスポーツに限らず、マイナースポーツ(ベンチャースポーツ)など競技人口が少ないスポーツ全般に言えることです。
ちなみに、エクストリームスポーツをする場所にいくのに、これくらい時間がかかっているそうです。
(引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000054.000009883.html)
それくらいはかかるでしょ!って感じの時間な気がしますが、「練習する場所が少ない」「練習する場所が遠い」と言った声が多かったことから、今回のプロジェクトに至ったわけですね。
エクストリームの普及に加え、地域活性につながる。だから、時間をかけて取り組んで欲しい
エクストリームスポーツはエンターテイメント性が非常に高く写真・映像映えしますし、スポーツの動画配信サービス(OTT)が増えてきた中で、キラーコンテンツのひとつになりえます。
そういった意味で、日産という大企業が大掛かりな調査を行って上でのプロジェクトということで、期待値が高いです。
また、全国から「遊び場」を募集することで、地域の余剰土地の再開発となり、そのまま地域活性につながる可能性も高いです。
(ちなみに、以前フレスコボールを普及していた際に、日本各地の砂浜の再開発を、地域おこし協力隊と文字通り協力してやるのはどうかと考えていました。)
スポーツツーリズムといった視点でも語れるプロジェクトになりうると思います。
土地を見つけ施設・設備を整えるハード面から、できてからの運用まで視野に入れているのであれば相応の時間がかかります。
一過性の盛り上がりで終わるのでなく、長期スパンで取り組んで日本のエクストリームスポーツを盛り上げてほしいですね。レッドブルみたく。
最後に
今回日産は「エクストリームスポーツ」とカテゴライズして取り組んでいますが、カテゴリ外のマイナースポーツ(ベンチャースポーツ)にも波及して欲しいような動きですね。
資金がある大きな団体が動くか、スポーツ同士が協働するか。
それでは!
世界陸上に向けた日本陸連のSNSキャンペーンがもったいなさすぎる件
こんにちは、わかつき(@tsubasa_waka)です。
日本陸連がアシックスとSNSキャンペーンを展開しているようです。
8月に開幕する世界陸上ロンドン大会に向けたキャンペーンで、個人的に「わ、もったいないな!」と思ったので書きたいと思います。
画像引用:http://www.jaaf.or.jp/news/article/10597/
参加ハードルの高さとインセンティブとのギャップ
7月19日からはじまったこのキャンペーン。
TwitterやInstagramで日本陸連の公式ハッシュタグ「#サンライズレッド」をつけて投稿すると抽選で代表選手のサイン入りグッズが当たるというものなんですが、
参加ハードルがものすごく高いです。
誰向けのキャンペーン?
参加条件を整理します。
- 日本陸連の公式TwitterまたはInstagramをフォロー
- アシックス社製の陸上競技日本代表レプリカを入手する(購入or借りる)
- レプリカを着た姿を撮り「#サンライズレッド」をつけてTwitterかInstagramで投稿する
あえて悪い言い方をすると、このキャンペーンに参加するには、レプリカTシャツを買わなきゃいけない上に自分の写真をSNS上に晒さなければなりません。
陸上を現役でやっている人か相当なファンじゃないと、なかなか代表レプリカTシャツを購入する人はいないと思います。(サッカーのように代表ユニを着て応援する文化が陸上では根付いていないですし)
この時点で、「昨年のリオ五輪でイケメンのケンブリッジ君のファンになった!」というようなライトなファンは、なかなか参加が難しいでしょう。
また、「レプリカTシャツを着用した姿を投稿」という条件も、一定層「自分の写真を一般公開でSNSにアップしたくない」人がいますので、そういった人を弾いてしまうことになります。
親しい友だち向けの鍵つきアカウントならバンバン写真を投稿する人も多いですが、投稿の中から抽選を行うというキャンペーンの設計上、鍵つきアカウントで投稿しても参加できません。
参加条件をみると、ライトファン向けではなくコアな陸上ファン向けのキャンペーンなのだろうか?と思います。
プレゼントをみるとライトファン向け?
ところが、プレゼントを見ると、
・世界選手権日本代表選手サイン入グッズ(10名様)
・その他グッズ(20名様)
です。
僕も陸上をやっていたコアファンのひとりとしては、代表選手のサイン入りグッズは確かに嬉しいですが、上記の条件を満たしてまで参加して手に入れたいかと言われると、う〜んと首を横に振ります。
コアファンは日本選手権など陸上の試合を会場まで観に行って直接選手にサインをもらえるような機会があるとありますし、どちらかというとライトファン向けのプレゼントのように思えます。
事実、僕は小〜中学生のころ、当時のトップ選手たちからサインをいただきまくっていました(室伏広治、末續慎吾、朝原宣治、池田久美子、高橋尚子、etc...敬称略)
コアファンが喜ぶプレゼントとしては、
・レプリカTシャツを着て代表選手と1日練習ができる、指導してもらえる
・世界陸上慰労会に出席して代表選手と交流できる
・代表選手の解説つきで世界陸上を観られる(大会後に振り返られる)
などが挙げられると思います。
正直、今回の参加条件でプレゼントがサイン入りグッズだと、なかなか参加モチベーションが上がらないと思いました。
参加条件の難易度とインセンティブによるモチベーションコントロールがバラバラな結果、7月19日以降の「#サンライズレッド」をつけた投稿をTwitterやInstagramでさがしても、ほとんど投稿されていません。(7月23日時点)
参加条件を軽くしてもっと多くの人に参加してもらえるキャンペーンにすればいいのになぁ。
ただでさえサニブラウンが注目されているのだから、ライトファンを巻き込んでもっと盛り上がりたい
今回のようなイベント時の「ハッシュタグをつけて投稿」企画は、ユーザーの投稿が増えることでSNS上で盛り上がりをつくりだし、イベントそのものへの注目度を大きく上げることができます。
おそらく「#サンライズレッド」もそれを意図していると思いますが、SNS上で盛り上がりを作る=ハッシュタグ投稿数を増やすためには、コアファンはもちろん、数が多いライトファンを巻き込む必要があります。
(さらに未ファンまで広がれば「バズった」と言える大きな盛り上がりを作ることができます。)
本キャンペーンにおいてライトファンの参加を促すには、参加ハードルを下げて「興味がある人なら誰でも参加できるレベル」にする必要があります。
盛り上がりを集約+可視化するために「#サンライズレッド」は使うとして、
「サンライズレッド」的な赤いグッズを撮って投稿するだけとか、選手への応援メッセージを投稿するだけとか、それくらい簡単に参加できたほうがよい。
(もしかしたら、日本陸連公式アカウントの投稿をRTするだけ、のレベルでも良かったのかもしれません。)
とにかく「#サンライズレッド」の投稿数を増やして、「SNS上でも盛り上がって日本代表を応援しよう!!」といったムーブメントを作り出す、それくらいの意図があっても良いと思います。
というのは、ライトファンを巻き込みムーブメントを作れるだけの盛り上がりが、いまの日本陸上界にはあるから。
昨年のリオ五輪男子4×100mリレーの銀メダル獲得により、世界陸上におけるリレーへの期待が大きく高まりました。
先日の日本選手権男子100m決勝では、10秒0台の選手が5人も顔を揃えるという史上最高レベルのレースになり、ダークホースだったサニブラウン選手が大会記録で優勝しました。
9秒台達成が現実味を帯びてきて、マスメディアでも陸上に関する報道が増えていた。
Googleのキーワードプランナーで「世界陸上」の検索数を見ると、
2015年の世界陸上開幕前(つまりいまの時期)の検索数は、約6〜10万程度。
対して今年の検索数は約10〜20万。
と、web上での注目度が大いに高まっていることがわかります。
特に今年6月の検索数は前月の2倍近く増えていて(おそらく男子100mへの注目でしょう)、僕の実感としても2007年世界陸上大阪大会以来の盛り上がりなんじゃないかなと思います。
2007年当時と違いSNS上でも盛り上がりが作れるようになった今だからこそ、たくさんの人を巻き込んでみんなで世界陸上を楽しめるようなキャンペーンだったらなぁと、もったいなく思いました。
最後に
本キャンペーンに関しては「もっとこうしたら良いのにな」と思うところはある一方で、日本陸連のTwitterやInstagramの投稿は競技や選手インタビューなどの動画も多く、楽しんでいつも拝見しています。
男子円盤投において、60m37の #日本記録 をマークした #堤雄司 選手の投てき!https://t.co/3tSTdLaTHg#jaaf #陸上 pic.twitter.com/vKIfJx8SFT
— JAAF(日本陸上競技連盟) (@jaaf_official) 2017年7月23日
【#世界選手権 壮行会】#多田修平 選手 @shu_hei_0624(関西学院大学)
— JAAF(日本陸上競技連盟) (@jaaf_official) 2017年7月22日
世界選手権は、8月4日(金)開幕です。
応援よろしくお願いします!#陸上 #サンライズレッドhttps://t.co/2QwAVEkqX3 pic.twitter.com/BVCCruFKnW
世界陸上開幕まであと2週間ほど。
9秒台や男子リレーのメダルなどなど、期待に胸を膨らませて開幕を待ちたいですね。
それでは。
アスリートに自分の人生を乗っけて何が悪い!
こんにちは、わかつき(@tsubasa_waka)です。
スポーツ界を中心に大きく話題になっている上西議員の発言。
浦和酷い負けかた。親善試合は遊びなのかな。
— うえにし小百合(上西小百合) (@uenishi_sayuri) 2017年7月15日
サッカーの応援しているだけのくせに、なんかやった気になってるのムカつく。他人に自分の人生乗っけてんじゃねえよ。
— うえにし小百合(上西小百合) (@uenishi_sayuri) 2017年7月16日
私に来るツイートをちょっと見たら、こんなんじゃ生ぬるかったかも。 https://t.co/QVrVZELrwO
— うえにし小百合(上西小百合) (@uenishi_sayuri) 2017年7月16日
何人かのJリーガーがリプライを送るなど、けっこうヒートアップしている本件ですが、少し思うことがあったので書こうと思います。一連の流れは下記などを参考に。
最初のツイートの内容はごく普通
まず、こちらのツイートが騒動の発端となっているわけですが、
浦和酷い負けかた。親善試合は遊びなのかな。
— うえにし小百合(上西小百合) (@uenishi_sayuri) 2017年7月15日
発言者が影響力を持っている議員さんなので炎上しただけで、冷静に見るとこのツイート内容それ自体はまったく問題じゃないと思います。
僕も代表戦なんかを見ていて、国際親善試合で格下に負けたりすると不甲斐ないなと思いますし、そういった旨をツイートする人もたくさんいると思います。
「監督変えろー!」「◯◯はメンバーにいらない!」などはよく見かける発言です。
僕が考えたいのは次の発言です。
サッカーの応援しているだけのくせに、なんかやった気になってるのムカつく。他人に自分の人生乗っけてんじゃねえよ。
— うえにし小百合(上西小百合) (@uenishi_sayuri) 2017年7月16日
アスリートに人生乗っけてなんかやった気になっていること。
アスリートに自分の人生を乗っけて何が悪い!
感情的っぽく書きましたが、発言者に対する個人的な感情は抜きにして考えます。
「アスリートに自分の人生を乗っけられること」はスポーツの非常に重要な価値だと思っています。
というのは、大きく2点。
1点目が、自分のアイデンティティを感じさせてくれること。
言い換えると、トップスポーツは共同体への帰属意識を強烈に感じさせてくれます。
世界一のダービーマッチであるクラシコが盛り上がるのも、マドリードとバルセロナという地域への強烈な帰属意識があるから。(スポーツは代理戦争や国威発揚の側面も持っていますし)
トップアスリートでなくても、おらが村のチーム・選手を応援することでその地域自体への帰属意識を感じさせてくれます。
僕が「自分は日本人だ!」と最も強く感じる瞬間は日本代表を応援しているときです。
昨年のリオ五輪で陸上男子日本代表がリレーで銀メダルをとったときは日本人であることを誇りに思いましたし、2010年サッカーワールドカップで決勝トーナメント進出を決めた時は新宿の街で道行く日本人すべてが仲間だと感じてハイタッチしまくりました。
このときほど強烈な日本人感を味わえるときはないと思いますし、スポーツの大きな価値じゃないのかなと思っています。
他人が戦っている姿に熱狂できて帰属意識も感じられる、素敵じゃないですか。
サッカーの外国人サポーターなんて、ほんと熱狂的。
2点目ですが、アスリートが自分が叶えられなかった夢を叶えてくれるということ。
僕は小学生〜高校生と陸上をやっていました。
全国大会で入賞したり活躍することが目標で、将来はオリンピックに出場することが夢でしたが、高校最後のインターハイも出場を果たすことができず、大学進学を機に陸上を辞めてしまいました。
オリンピックでメダルを獲りたい
Jリーガーになりたい
プロ野球選手になりたい
厳しい勝負の世界。
スポーツをやっていた多くの人がそうだと思いますが、小さい頃に見た大きな夢は、叶えることは難しい。
いまテレビの前で躍動しているアスリートは、僕らが果たせなかった夢に果敢に挑戦しています。
高校時代に競い合っていた他校の後輩が昨年のリオ五輪に出場していました。
世界の強豪相手に戦う姿を見て、思わず「俺の分もがんばってくれ!」なんて感情移入してしまい、泣きそうになりました。
そういうこと、僕だけでしょうか?
アスリートは、
希少な高い身体能力を持ち、
目標を達成するために不断の努力ができ、
プレッシャーに耐えるメンタルを持ち、
そして運も持っている。
単純にいち個体として非常に高い価値を持っていると思います。
自分の夢を代わりに叶えてくれる「人生乗っけられる」アスリートは、すごく尊い存在だなと思います。
アイデンティティ(共同体への帰属意識)の確立
自分が果たせなかった夢への挑戦
これが「アスリートに自分の人生を乗っけられること」の重要な価値だと思います。
最後に
本騒動をきっかけに、以前から考えていたスポーツの価値、アスリートの価値に対する自分の考えをまとめてみました。
みなさんは、スポーツの価値はどんなところにあると思いますか?
それでは
ネットスポーツ中継ならではの価値とは
こんにちは、わかつき(@tsubasa_waka)です。
動画ビジネスや動画マーケティングのカンファレンスイベント「Brightcove PLAY 2017 Tokyo」におけるスポーツ動画ビジネスのセッションのレポート記事がCNETから出ていました。
「SportsNavi Live」のワイズ・スポーツ、「バーチャル高校野球」の朝日新聞社、マイナースポーツを中心に動画配信を行う社団法人リコネクトテレビジョンの3社によるセッション。
スポーツ動画、の中のスポーツのネット配信・中継に関するセッションで、動画配信サービス(OTT)におけるスポーツ観戦の実状がよくわかる内容となっています。
ネットスポーツ中継ならではの価値とは
記事中では、ネットスポーツ中継ならではの価値を大きく4つ挙げています。
簡単にサマると
1.いつでもどこでもスポーツ観戦を楽しめる
2.多視点を切り替えたり様々なデータをみながら中継が楽しめる
3.SNSと連動することで情報を拡散させ感動を共有することができる
4.テレビ放送されることがない地方大会やマイナースポーツが観られる
まず「1.いつでもどこでもスポーツ観戦を楽しめる」という点では、記事中でも当初の想定とは違った状況になっているとのこと。
ネット配信の視聴スタイルで最も多いのが「一人で、家で観る」という現状を指摘。「私たちがネットスポーツ中継に参入したときは、もっとスマートフォンで(屋外や移動中に)観るというスタイルを構想していたが、実際には“一人で、家で”というところに留まっているという点が大きな課題だ。もっとインターネットらしいスポーツ中継の楽しみ方を提案していかなければならない」(小林氏)。
これは、ニールセンスポーツの調査、「OTTにおけるスポーツ観戦実態」でも同様の傾向がみられています。
引用:【動画配信(OTT)サービスによるスポーツ観戦実態】... - データで見るスポーツマーケティング | Facebook
「いつでもどこでも」とデバイス的な環境は整っていますが、ユーザーの行動としては自宅でのながら視聴やスキマ時間の消費など、自宅における余暇時間の活用の域を脱していません。
僕の体験談も含め推測すると、スポーツ中継の尺の長さとテンポの悪さ(間延びする時間もあるし飛ばすこともできない)が、移動時間の尺とあっていないのではないでしょうか。
移動時間では短時間で高刺激のコンテンツを消費するイメージがあるので、スポーツ中継はいまいち合わないのかもしれません(大声で叫べないですしね)
記事中でもその問題点について述べられていますし、
オフィスの休憩時間や移動中などのスキマ時間にどのような価値が提供できるかが重要であり、ニアライブ(試合途中)のハイライト動画、試合経過がすぐにわかるサマリーといったインスタントなコンテンツの提供や、気になった選手の情報などを深堀できる世界を作っていくという方向性は必要なのではないか
ユーザーも短時間で高刺激のコンテンツを求めている傾向がみられます。
引用:【動画配信(OTT)サービスにファンは何を求めているのか?】... - データで見るスポーツマーケティング | Facebook
「2.多視点を切り替えたり様々なデータをみながら中継が楽しめる」にもつながってきますが、スポーツ中継をしてかつユーザーが様々な角度からそのスポーツを楽しめるようなコンテンツ提供が重要そうです。
このあたりは、スポーツのVR配信にも通ずるところがありますね。
また、メイン動画を流しつつ他の動画を漁ったり他の投稿を見ることができるYouTubeやFacebookなどソーシャルメディアのユーザー体験になれている中で、この「スポーツ中継しながら」という点は地味に重要だと思っています。
次に「3.SNSと連動することで情報を拡散させ感動を共有することができる」という点については、情報流通の意味ではうまく活用できていると思いますが、後者の「感動の共有」ではまだまだスポーツを観る「だけ」のフェーズかなと思います。
OTTサービスでスポーツ中継をみてTwitterに投稿しても自分の感情をシェアするだけで友人の感情は見えませんし、かといってわざわざTwitterを開くと中継が途切れてしまいます。
その点では、TwitterがエクスクルーシブでウィンブルドンやNFLのライブ中継するのは理にかなっていますしユーザー体験的にも気持ち良いです。
また「熱狂の共有」という意味ではスポーツライブエンターテイメントアプリ「Player!」の方が圧倒的に優れています。
そういった意味では、ネットスポーツ中継の観戦体験と感情の共有体験はまだまだ同居しているとは言えないのではないでしょうか。
最後に、「4.テレビ放送されることがない地方大会やマイナースポーツが観られる」はネットスポーツ中継の大きな強みですし、スポーツ業界の発展に大きく大きく貢献する要素だと思います。新しい楽しみを得られるわけですし。
ただいきつく問題は上述したところと同様だと思うので、ユーザーの行動やインサイトにあったサービスへとどんどん進化してほしいですね。
最後に
冒頭のレポート記事内にもありますが、スポーツ動画ビジネスのマネタイズについても考えようと思いましたが、少々長くなったのでそちらはまた次回。
それでは!
関連記事
マイナースポーツ普及者はアプリのグロースハック戦略を勉強せよ
こんにちは、わかつき(@tsubasa_waka)です。
僕は2015年ごろ、フレスコボールというブラジル生まれのマイナースポーツの普及に携わっている時期がありました。
ビーチでやる羽子板みたいなラケットスポーツ。
日本にフレスコボール協会ができてそんなに経っていない時期で、まだ第一回目のジャパンオープン(全国大会)が開催される前のフェーズでの普及活動でした。
普段僕はソーシャルメディアを中心にデジタルマーケティングの世界にいるわけですが、ふと当時の普及活動を振り返ってみると、フレスコボールを含むマイナースポーツ*普及活動には、アプリのグロースハック戦略がものっすごく参考になるんじゃないかとふと思いました。(ので勢いそのまま本記事を書いています)
*最近ではベンチャースポーツとも呼びます。
「また参加したくなる」体験会を設計していた
当時僕が実際に行っていた普及活動のひとつを紹介します。2015年の1〜3月の間、フレスコボール体験会として「フレスコボール朝活」を開催していました。当時の記事から引用します。
実情は体験会というほど堅いものではなく、休日の午前中に大きめの公園に集まり、フレスコボールで朝活をして楽しんでいただけです笑。毎回友達に友達を呼んでもらい、10〜15人程度の規模でわちゃわちゃ行っていました。 「とにかくフレスコボールを知ってもらい、楽しんでもらおう」というゆるいコンセプトで、1月末から三浦海岸に引っ越す3月末までの3ヶ月間で8回ほど実施しました。ほぼ毎週末「フレスコボール de 朝活」やっていました。リア充感満載ですっごく楽しかった笑
引用:フレスコボールの普及についての考えを書いたよ!〜フレスコボール ジャパンオープン2015を終えて〜 - スポビズライフなブログ
友達の友達くらいまでをターゲットにしていた小さな企画ということもあり、毎回10〜15人ほどの人が参加してくれ、その半分は1回はフレスコボール朝活に参加してくれた人で、その人が新たな友達を連れてまた参加してくれるような形でした。
上記の記事では書いていませんが、フレスコボール朝活をするにあたって「また参加したいな」と思ってもらえるよう設計を工夫していました。
具体的には「楽しい」と思えるポイントを複数設置すること。
・単純にフレスコボールが(身体を動かすことが)楽しい
・知らない人と知り合えて楽しい
・公園の芝生が気持ちよくて楽しい
・青空の下で朝食をとるのが新鮮で楽しい
・土曜の朝を有効活用することで週末全てが楽しい
などなど、「フレスコボール朝活に参加してよかったな」と思えるポイントを複数つくることで、どんな人でも1つは楽しんでもらるのではないかと思って運営していました。
楽しさが担保されていることがわかれば、新たな友達を連れてまた参加してくれるんじゃないかなと思っていて、結果として小さな規模ですがうまく回っていました。
(もちろん参加者にヒアリングして改善したりとPDCA回していろいろ施策を打っていました)
少し長くなりましたが、僕がフレスコボールの普及活動の中で体験したこの小さな成功体験は、アプリのグロースハックに通ずるものがあると感じました。
アプリも使って楽しいのはもちろん、広めるために新規ユーザーを連れてくる仕組みづくりに工夫を凝らしている
僕が小さな体験会でやっていたことは、アプリでいうユーザー体験をより良くして、かつバイラルさせることと似ています。
アプリやwebサービスでごくごく普通に見られることで、仮説を設定して施策を打ち検証、初期ユーザーからヒアリングをして問題点を抽出し改善し、ユーザー体験を向上させていく。
バイラル戦略(ここでは狭義としてユーザーが新たなユーザーを連れてくる仕組みを指します)としては、割り勘アプリPaymoやフード配達アプリUber eatsなんかがわかりやすい例ですが、既存ユーザーが新規ユーザーを招待するとポイントや無料コードがもらえるなど、「友達にPaymoを紹介したいな」と思わせる明確なインセンティブがあります。
特にPaymoはアプリ内でしか使えないポイントを支払い時に付与したり、ボーナス的に多めに付与したりすることで、何度もアプリを使い友達に紹介したくなるバイラルループの仕掛けが非常に優れています。
参考:Paymoのバイラルループの仕掛け、体感して理解していますか? | The Startup
フレスコボール朝活ではユーザー体験の向上という点ではなかなかうまくいったと思いますが、今思うとバイラル戦略としてはややラッキーパンチ感が否めず、もっと「友達にフレスコボール紹介したい」と明確に思わせるような工夫をすればよかったなと思いました。
マイナースポーツをアプリ(プロダクト)に見立てることで、ユーザー体験の向上やユーザーグロースだけでなく、プロモーションやマネタイズなどをひっくるめたアプリのグロースハック戦略がめっちゃくちゃ参考になる気がしませんか?
最後に
アプリのグロースハック戦略がもろに参考になるのは、野球やサッカーといったメガスポーツより、普及フェーズにあるマイナースポーツの方かなと思いました。
本記事はけっこう思いつきのままあまり調べずに書いたので、もしマイナースポーツの普及活動でアプリやサービスのグロースハック戦略を参考にしている事例があったらぜひ教えてください!
それでは!
JリーグをVRライブ配信へ。NTTグループの取組み
こんにちは、わかつき(@tsubasa_waka)です。
NTTドコモがJリーグとパートナー契約を結び、VR配信を視野に入れていることを発表しました。
契約期間は2017年7月から2019年12月までの約2年間で、NTTグループの最新技術をJリーグに「総動員」するとのことです。
「ARやVR、次世代通信などを活用してスタジアムに新しいエンタテインメント体験ができる環境を提供することも考えていきたい」
と語っているように、 JリーグのVR配信も近い未来実現するかもしれません。
NTTのスポーツVRへの取り組み
ドコモを含む、NTTグループのスポーツVR事例を2つ見てみましょう。まずはこちら。
今年2月に開催された冬季アジア札幌大会のカーリング競技において、ストーンにカメラを設置しストーン目線でVR動画を公開しました。新視点の360度動画で、もちろんライブ配信ではありません。
一方ホッケー競技では、「フリービューポイント映像(自由視点映像)」と呼ぶ360度映像のスマートフォンへの配信を実現しています。会場に16台のカメラを設置し撮影し、技術的にはライブ配信も可能とのことです。
360度動画ではありませんが、3視点を切り替えて観戦できるマルチアングル映像も提供していました。
また、NTTはVRトレーニングの領域でも実績を出しています。
相手投手の軌道を打席で体感できるもので、一般向けのスポーツ体験ゲームとは異なりリアリティが非常に高いものだとのこと。
この領域ではEON Sportsがリードしていますが、単純なVRコンテンツとしてはひけをとらないものであるとのことです。
同様の技術は、テニスでも用いられています。
スポーツ×ICT
VR配信から少し広げると、NTTはスポーツ×ICTの領域に経営戦略としても力を入れています。
有名なものは、スポンサーをつとめる大宮アルディージャのホームスタジアム、NACK5スタジアム大宮のスマートスタジアム化です。既にモデル事例となり他のスタジアムのスマートスタジアム化に応用されています。
スマートスタジアムからスマートシティーの実現を構想しており、地域活性の領域にも注力するとしています。
NTTの「新たな価値創出」では、「新たな生活交通とまちづくり(交通)」の取り組みなども紹介されており、人々の「暮らし」により大きく関わろうとしていることがわかります。
参考:交通|NTT×地域創生|グループ経営戦略の取り組み|NTT HOME
最後に
NTTドコモはJリーグの放映権を有しているDAZNと提携していますし、権利的な意味ではJリーグのVRライブ配信は現実味があります。
一方でVR配信技術、そしてハードの普及という意味では、2年ちょっとの契約期間はいささか短いのではないかと懸念点もあります。
とはいえ、VRライブ配信においてはNextVRやLiveLike、インテルなど海外企業の先行が目立つので、ぜひ日本から世界をリードしていってほしいなと思います。
通信という巨大インフラに配信プラットフォーム、現場(スタジアム)、研究機関をグループで持っていますし、引き続きウォッチしていきたいと思います。
それでは。
参考
Jリーグがドコモとトップパートナー契約--NTTグループとARやVRを活用へ - CNET Japan
NTTグループ、VRでスポーツ観戦 先行の米国にらむ|オリパラ|NIKKEI STYLE
関連記事
NextVRのさらなる進化に期待しよう
先日からスポーツVRに関して何本か書いてきましたが、一昨日のSportTechieはNextVRに言及した記事が出されていました。
NextVRは早くからトップスポーツのVR中継を先導してきましたが、ここ最近ではLiveLikeやIntel(VOKE)あたりの動きが大きく、やや話題性としては他社に先行されている感がありました。
そんな中で、NextVRのEXECUTIVE CHAIRMANであるBrad Allen氏がインタビューに答え、NextVRの視聴体験がさらに進化する3つのポイントを話しています。
NextVRの視聴体験がさらに進化する3つのポイント
ソーシャル機能の拡充
LiveLikeとFOXスポーツが共同で提供している「FOX SPORTS VR」でもソーシャル機能の拡充が発表されましたが、NextVRも当然注力していくとのこと。
NextVRはスポーツ以外にも音楽などのライブイベントのVR配信も行っていますし、様々なシーンでテストしより多くのユーザーとマルチビューイングできるような動きをとっていくかもしれませんね。
ヘッドマウントディスプレイの進化
これはNextVRそのものというより、VR業界全体の動きです。
VR普及の問題の1つはヘッドマウントディスプレイ(HMD)の普及の難しさがあげらえれますし、HMDを持ったとしても装着して長時間スポーツ観戦するのは疲れますよね。
HMD軽量化(かつスタンドアローン)の動きが活発で、VR全体の普及が進めば、おのずとスポーツのVR観戦も普及します。
VRによるスポーツ観戦における問題点としてVR観戦の不慣れさやVR酔いがあげられますが、NextVRは平均視聴時間が7〜8分から45分にと大幅に増加しています。
早くから様々なスポーツをVR配信することで得られたデータやノウハウで、現時点のHMDにおいてもユーザーが心地よくVRでスポーツを観られるようしっかりと改善されており、軽量化されたHMDが普及してく中でさらに視聴時間は増加するのではないでしょうか。
高い映像品質
NBAの配信では特にゴールしたに設置したカメラからの配信が人気だったとのこと。NextVRの解像度は高いとのことで、上述した視聴時間の長さにも影響する要素です。
リッチさでいうと映像品質ではインテルが先んじている感もありますが、中継時の視聴体験という点ではNextVRが先行していそうですね。
最後に
記事の最後でAllen氏は、これらの進化は10年先5年先の話でなく2年以内に起こりうるだろうと話していて、LiveLikeやインテルと各社ともそうですが、2020年の東京オリンピックをひとつのターニングポイントとしている感がありますね。(ビッグイベントなんで当然ですが)
早め早めから開催地である東京にもスポーツVRの最先端が集まってきそうですね。
それでは。